バックナンバー:
「Vol.1 ビジネスデザインがなぜ必要か?」
「Vol.2 ビジネスデザインが求められる場面」
第1回、2回を通して、マクロ的視点とミクロ的視点の行き来をして、<ビジネスの全体像を設計していくこと>が『ビジネスデザイン』と定義してきました。
では、どのように2つの視点を行き来するのか?を最終回で書いています。
我々のアプローチはすごく単純で、それは「地図」を用いることです。Google Mapで地球全体を見渡せる地図から具体的な目的地へズームインしていくように、ビジネスも「地図」をまずは大きくみて、ズームインして小さくみる、ちょっとズームアウトをして部分的にみる。このようなアプローチを取れば、視点の行き来ができます。
ただ、この単純な手法も<正確な地図>がなければ実現できません。そのため、私達はビジネス開発における「地図」を作っており、日々アップデートしています。下記の図が簡易版の「全体地図」です。本来利用している地図はもっと細かいですが、今回は簡易版で示します。
この図はビジネスを開発していくときに必要になる要素を大きく4つの象限で表現しています。この象限は全体から視点の差が大きい要素群ごとに分別したものです。なので、それぞれの象限を移り変わる時に視座を変える必要があることを意味しています。
は多岐にわたり、様々なフレームワークやメソッドがありますが、必要最低限、やっておくべき項目をここでは記載しています。例えば、CONCEPTの象限では、IDEATIONで課題設定をしたらそれをユーザーが「雇用(解決)すべきジョブ」に昇華させます。また、課題からすぐにソリューションを求めるのではなく、CONCEPT DESIGNの「コンセプト設定」で概念形成をしてからターゲット、ベネフィット、アウトカムなどを考えていくことで説得力のあるソリューションが作れます。そのプロセスを俯瞰的に見るためキーワード化して配置しています。
もう一点、地図を見る時に非常に重要な要素が「現在地」と「経路」です。
今、自分がどこにいるか、どこに向かおうとしているのか、を理解していないと地図は役に立ちません。まず「経路」に関しては、我々は想定できる経路をまとめた経路集のようなものを作成しています。この経路集は非常に細かいので、ここでは詳細は掲載しませんが一部を例に出すと、例えばビジネスアイデアが、どこから生まれたか、生まれた経緯について、誰かから課題感を聞いたのか、技術の組み合わせによって思いついたのか、自身の原体験から生まれたのかなど様々な種類があります。それらはそれぞれで今後のステップが変わって来るので、それぞれのシチュエーションによって経路を記載しています。具体的には分岐できるようになっているイメージです。ただ、相当の分岐があるのですべてを記載すると複雑になります。そこで「迷いやすい点」「つまづきやすい点」だけを記載しています。次に、各経路にその時点での状況を「自問リスト」として記載します。「自問リスト」を確認することで、自分の「現在地」も分かる仕組みを入れるわけです。下図のような問いの設定が「経路集」と「現在地」を確認できる事業開発プロセスです。
弊社で使っているチェックリスト。プロジェクトを通して、自問を繰り返し、経路と現在地を確認するために活用する
この地図はあくまでツールすぎませんが、自分が次にどこにいけば良いのか、次の場所にはどう行けば良いのかを知っていることには大きな価値があると思います。そのためにこの地図をプロジェクト時には利用するようにしています。
先の地図は、クライアント(と我々)が一つの視点に囚われないように使うものです。現在地を俯瞰的に見ることができると、“ユーザー課題にばっかり時間を使っていたけどマーケットの調査があまりできていないな・・・”、とか、“事業開発のためにパートナーに依頼しようとしたが、具体的に何を依頼すべきかはっきりしないな・・・” などが防げます。また、ユーザーリサーチ、PoC、テストマーケティングを実施する場合には、『何を確認すべきか、また悪い反応があった場合にどう対処するか』設計できるようになります。地図が無いために、確認すべきが曖昧なケースに、幾度も遭遇しました。
地図を用いた結果、取るべき対処はケースバイケースですが、どこまで立ち戻るか?はどのケースでもほぼ同じです。ユーザーのターゲティングなのか?マーケットの読みなのか?作るものが課題を解決していないのか?自身の企画を見直す、チェックポイントになります。
要するに、地図こそ設計プロセスそのものです。そして、その設計図にあたるアウトプットがそれぞれにあります。あくまでプロセスなので、具体的にどう考えるか?は記載されていません・・・その思考方法は一概に記載できず、また制限すべきではありません。
プロセスが論理的なのか直感的なのかは問題でなく、必要となる設計プロセスが実行されればいいのです。違う言い方をすれば、ビジネスデザイの全体像の図も、事業開発における構造的な要素は定型化し、主体的な部分に時間をかける意図で存在します。何より、構造的にかつ俯瞰的にその要素を確認できれば、自然と視点の行き来ができるはずです。
ビジネスデザイナーは、この視点の行き来を意識し、ビジネスの全体像をデザインしていくことがミッションです。つまり、POINT EDGEの提供できる価値です。ツールや考え方、姿勢やメンタリティを提供しビジネス成功へ登頂の成功率を上げることです。だからこそ、ビジネスデザイナーは一緒に山を登ります。ヘリコプターで上から声援を送ったり、下から荷揚げを手伝うだけはしません。一緒に伴走して登頂を支援します。そして、皆さんと一緒に登頂を心の底から喜べればと思っています。
視点をいかに行き来するか? つまり、どちらか一方が重要というわけではありません。両方の視点が重要であり、その視点を行き来することが重要なのです。重要なのは、こういった二項対立の形式に終始せず、その上の視点で一貫性を持って事業開発を行うことです。
最後に日本有数の登山家、大島亮吉の名言を紹介します。
“道のありがたみを知っている者は、道の無いところを歩いた者だけだ”
これにて、全3回のビジネスデザイン実践ためのコラムを終わります。今後も同様の話題をさまざまな視点でご紹介していきます。ご期待ください。
Tetsuya Tomomatsu