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意味を,デザインする.

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Vol.1 ビジネスデザインがなぜ必要か?

友松哲也(POINT EDGE 代表/ビジネスデザイナー)

今年からPOINT EDGEのロゴに「BUSINESS DESIGN」と記すことにしました。その理由は、ビジネスデザインを価値に変える会社としての宣言でもあります。3本の連続コラムを通じて、その意味と現在の考えを表現していきます。第1回は、デザインという言葉をきちんと捉えるチャレンジです。

デザイナーとはどんな行為をする人か?

優れたデザイナーは誰か?…答えるのが難しい質問でしょう。好きなアーティストは?と聞かれれば、答えられる人も多いでしょう。一方でデザイナーと言われるとなかなかスッとは答えが出てきません。<デザイン>は使われる範囲が広く曖昧な単語です。こと日本においては、主に視覚領域(意匠)を担当する・・・閉じた定義をされることが多いです。しかし、<本当の意味>でデザインをしているデザイナーは視覚領域だけをデザインしているのでしょうか?

海外では、デザイナーがモノづくりの現場で大枠の仕様を決めたり、利用する技術を決めたりと、構造的な部分まで担当することが多いようです。”デザイナー”を英語版Wikipediaで調べると「設計オブジェクトの構造特性を指定するエージェントである」とより広範囲な定義がされています。有名なデザイナーでは、アップルのCDO(最高デザイン責任者)であったジョナサン・アイブがいますが、彼が視覚領域にとどまらないデザインをしていることは想像に難くないです。

昨今、ビジネス領域に関して<デザインの重要性>が提唱されています。ビジネス文脈でのデザインはどこまでを指すのでしょう。ここが曖昧なまま議論が進むことが非常に多いです。特に求められるデザイナーの役割をきちんと定義し、デザインを語っているシーンは少ないはずです。

特にデザイナーが何をデザインするのか、何を生み出すのか。ビジネス領域の場合、この点が議論から抜け落ちていることが多いように感じます。いかに優秀なデザイナーであっても、正しくデザインの定義をしなければ真価は発揮できないはずです。

私は、視覚領域のような美的な感覚も、ユーザーが利用する際に体感する感性も、作るためにかかるコストも、どのような効果を生むのかも含め、<総体>として思慮し、ベストな創造を行う行為が<デザイン>であると考えます。それができるのが、私の考える<本来の意味でのデザイナー>です。

ビジネスにおけるデザインとは2つの視点の行き来

ビジネスとは結果が見えるものです。ビジネスを<継続的な経済活動>と定義すると、経済活動=対価を支払う顧客がいることです。買ってくれる顧客の数、払う金額を知れば、結果が確認できます。そのためか、かつてはマクロ的なアプローチで計画を立てることが定石でした。市場がどれくらいあるか?競合他社の市場影響力はどの程度か?など、市場をマクロ的視点で捉え、「市場における関係性」を重要視するアプローチでした。

しかし、昨今のビジネス環境を顧みると、マクロ的な視点だけでは通用しません。ゲームチェンジャーと言われるGoogleやFacebookのような企業が生まれ、「市場のおける関係性」では説明できない事象が発生しています。存在しなかった市場が新たに生まれたり、市場を覆すような企業が次々に出現している現況では、マクロ的な視点だけでビジネスを計画しては市場で勝っていけないのです。そこで注目されたのが、ミクロ的な視点・・・つまり購入者の感情や行動にフォーカスした「デザイン思考」「UXデザイン」です。これらのアプローチは一括りに「デザイン」という言葉で語られることが多くなってきました。

ただ、デザイン思考などミクロ的な視点だけでもビジネスを設計できません。デザイン的アプローチはユーザーが気に入る製品を作り出すことに長けていますが、いくらユーザーに気に入られても、量を販売し、利益が出なければビジネスとはいえません。それなりの量を販売するためには、マクロ的な視点も必要です。つまり、市場でいかに勝っていくか?も考える必要があります。これがビジネスの現場におけるデザインです。

以前、プロダクトマネジメント業務にて、マクロとミクロの視点の違いに気付かされることがありました。ユーザーが気に入る製品を開発するため、ユーザー先へ出向き、希望する機能をヒアリングをしたり、実際に利用している現場を観察しました。しかし、求められる機能を実装した製品をリリースしても、売上には影響がない。その時は、「ユーザーが良いと思う製品であれば次第に売上も付いてくる」と自分にいい聞かせ、さらにユーザーの声を聞き続けました。しかし、<売上>という結果がついてこない事態に遭遇しました。

その時に頭を悩ませて分かったことがあります。ミクロとマクロの視点です。

先の製品開発では、市場により安価な競合製品があり、価格差を補うだけの機能を提供すれば勝てると考えました。しかし、そう簡単ではなかったのです。ユーザーは製品を利用することで得られるメリットを他製品と相対的に比べ、得られるメリットに妥当なコストの製品を選択します。比較して<機能が優位(多様)>であっても求める効果が少なければ、費用を支払いません。当たり前のことです。ユーザーへの提供価値も重要、市場における関係性も重要、当たり前の事実。しかし、ミクロ的な視点に陥ってしまっていた私はなかなか気づきませんでした。その後、ミクロ視点とマクロ視点を行き来するプロダクトマネジメントが重要だと気づき、どちらかに偏らないよう心がけるようになりました。

ビジネスにおける2つの視点

ビジネスデザインを実践するために

ビジネスデザインとは、ミクロ的な視点とマクロ的な視点を使うことです。ユーザーの立場に立って求められる製品を作ること、市場をよく理解し求められる製品を適正に提供すること、両方です。当たり前のことなのですが、なかなかできません。なぜならそれぞれの視点に求められる<思考>が違うからです。

ミクロ的な視点は、ユーザーの立場に立って、ユーザーが利用する際の行動や感情を読み取る。時にはユーザーになりきって、製品のダメ出しをする。つまり、ミクロ的な視点は<主観的>と言えます。翻って、マクロ的な視点は、気に入る気に入らないに関わらず、製品が生み出す価値を捉え、立ち位置を俯瞰する。そういった意味で、マクロ的な視点は<客観的>です。

主観性と客観性を両立するのは至難の業です。しかし、本来のデザインの意味を考えると、デザイン行為とは、この主観と客観の行き来をやってのけることではないでしょうか? 本質的な意味で<ビジネスをデザインした>とは、2つの視座を持つことができた状態ではないでしょうか? そう考えて私は「ビジネスデザイン」を行っています。昨今「ビジネスデザイン」という言葉は海外でも使われはじめました。よくよく観察すると、この2つの視点の行き来が実現できる工夫がされています。そこで、私たちは体系的に実現できるように様々な工夫をはじめています。

ビジネスにおける2つの視点

次回以降その工夫についてご紹介できればと思っています。

友松哲也

Tetsuya Tomomatsu

株式会社POINT EDGE代表取締役/ビジネスデザイナー
前職IT系メーカーにてソフトウェアのプロダクトマネージャーを担当。その当時から企画立案を体系的にできないかと考えUXやビジネスデザインを独学で学び始める。同社のIoT製品企画/立ち上げプロジェクトを成功に導き、より幅広いビジネス課題解決を支援したいとキャリアチェンジ。“一人の天才の力ではなく、チームの力で課題を解決する仕組みが日本企業には必要”と考え、クリエイターコミュニティを擁するデザインファーム株式会社POINT EDGEを設立。「モノゴトをデザインする」をコンセプトにさまざまな職種のクライアントにビジネス課題解決を支援している。
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