今回のテーマは店舗DX。日本と中国で実際に関わったプロジェクトを通して得た小売・店舗DXにおけるポイントを語りました。イベント時の発表内容を一部抜粋してお送りします。フルバージョンはYoutubeよりご覧ください。
店舗DXという言葉は最近徐々に聞かれる言葉になってきたのではないでしょうか。メディアでの特集も少なくないこともあり、目に触れる機会が多くあると思います。しかし、そういった記事を見るときに、なにか違和感を感じることが多くありました。その理由は、”D”(どういったツールやソリューション)を使うのかを起点にしていて、”X”が見えてこないと感じたからでした。今回は、”X”中心のお話をしたいと思います。
DXの定義として様々な言い方がありますが、その中のひとつとして「デジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること」になると思います。この「変革」が大事なポイントです。それを踏まえ、店舗DXについてみていきましょう。 最近、売らない店舗というものが店舗DXで注目をあびているのをご存知でしょうか。
今回は「売らない店舗」からDXの定義を説明します。 一番有名なところだとb8taさんです。サンフランシスコからはじまった店舗で、アーリーアダプターの方が好むような、目新しいファッションやガジェットなどを取り扱うお店です。 ここでは、販売するのではなく、消費者が手に触れて体験をして感じてもらうところが主眼におかれた店舗です。この成功もあり、各百貨店が売らない店舗を作り始めました。
売らない店舗の”X”とはなにか。 売らない店舗というからには、目的=売らないことと思いがちですが、これは違います。「売らない」というのはキャッチフレーズとしてわかりやすいだけであって、これは必ずしも目的にはなりません。 「ブランドに場所を貸し、認知をあげ、消費者の反応を確かめる」というのが、本来の売らない店舗の目的です。
場所でいうと、人が来てもらうのに適した場所であることに価値がある。
また、消費者の反応を知ることも大事なポイントです。例えば、メーカーは小売にだすと売上以外での消費者の反応がわかりづらいのが課題になります。その課題に対して、AIカメラを使用したり、店員からの記録により、行動を分析をすることができます。ここの詳細については、
note にて記載していますので、こちらも合わせて見ていただけると嬉しいです。
〉〉note:売らない店舗から考えるこれからの接客とテクノロジーの幸福な関係
では、そもそもなぜこういう形態の店舗がうまれたのか。 まずは、ECの伸びがひとつにあります。販売チャネルとして店舗以外の選択肢がでてきていること、スマホの普及率からいつでもどこでも購入できるようになったことなどが背景にあります。そのため、かつては「売る」ことを抜きに店舗は存在し得なかったが、「売らない」でも店舗が成立するような変化がおきました。
次に店舗の体験についてです。店舗は体験が大事というのはよく聞くと思います。売らなくてよくなった代わりに、「店舗は体験する場所」となってきました。体験とひとことでいっても、アミューズメント性の高いプロジェクションマッピングのようなものをさして体験ということもあれば、無人コンビニのようにスムーズなユーザー体験、UXやUIをさして体験ということもあります。
以前は、店舗にしか売る場所がなかったので、店舗を「売る場所」から切り離せなかったですし、広告など人に伝えるということにおいても、今のようにSNSなどはなかったと思います。それに対して現在は、マスメディアに限らずデジタルやSNSなど、ブランドの世界観や価値を伝える場所が本当にたくさんあります。つまり、消費者とブランドをつなぐタッチポイントが非常に多くあることになります。 店舗は、複数あるタッチポイントのひとつなので、そのうえで店舗の体験を定義する必要があります。
購買行動の段階を表す考え方として、認知・興味・接触・購入・満足というものがあります。 これを「売らない店舗」に当てはめてみると、「購入」はKPIには含まれません。「認知」と「興味」と「接触」に関わる体験をいかに引き伸ばすか、という考え方になります。 つまり、通常と異なるKPI(購入ではない)が設定されているので、お店の位置付けや意味合い、掲げている体験の中身が今までと変わってきます。 また、売らない店舗は、なぜ「認知・興味・接触」を引き伸ばしているのか、それは、この体験の結果、購入につながるためです。ただ、「購入」がお店の機能にはないので、Eコマース等、他の販売チャネルにつなげて購買を促していくことになります。
それぞれの販売チャネルが何を担っているかその中で店舗は何を担うかが、DXの”X”を考えるうえでのポイントです。ただ、確かにチャネルが増えているため、それぞれの定義が難しくなっているのはありますが、オムニチャネル全体でチームを組みながらそれぞれの位置づけを考えていくのが必要なプロセスになると思います。
最後に、DXの”D”についても触れていきます。Dというのは、”フィジカルな世界にはないパラメータを変化させることができるもの”と言い換えられます。
例えば、無人店舗のAmazon Go ですと、決済の際、ウォークスルーで決済ができます。人間の対応だと、オペレーションを改善したとしても、限られた人数しか対応することができないものを、この技術を使うことで、店員の人数に影響することなく、決済のスピードをあげることができます。 人間の限界を超えることができるのがデジタルの役割です。
DXに関しては、必ずしもテクノロジーだけの話だけではなく、今回は触れていないですが、店舗のビジネスとして再編するというのも店舗DXの側面です。 店舗のビジネスが変わったり、テクノロジーや体験が変われば、空間のデザインも変化していきます。そのため、店舗DXを考えるときは、ビジネスとテクノロジーと空間デザインの3要素を三位一体で考えていく必要があるのではと思っています。
2022年10月25日にBUSINESS EDGE #07 を開催します。テーマは「デジタル時代に求められるマーケティングDX」 マーケティングDXとデジタルマーケティング、同じように見える言葉の違いを説明することはできますか?マーケティングにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎知識と先進的な事例を交えてポイントをお伝えします。
悩みの多くは店舗DXに必要なビジネス・テクノロジー・インテリアデザインの分断にあります。POINT EDGEはこの3つの要素を横断した視点でそれぞれのお悩みを、解決・実行支援をします。ぜひお気軽にご相談ください!
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